パートのコスト削減
中堅技術者の卵を、大企業が競うように採ったのだと思う。
もちろん、大企業への就職と職業人としての充実感は一致しない。
その後の大きな経済の変化のうねりのなかで、ある者は早々とリストラの憂き目にあい、またある者は中堅技術者というプライドのひとかけらも持てない仕事をあてがわれたりしたのであった。
彼らがご都合主義の政治・経済事情のなかで翻弄された姿はいずれまとめたいと思うが、再び中小企業に話を戻せば、こちらはかの高度経済成長期にあっても、中堅技術者の卵たちを割り当てられるという恩恵にはあずかれなかった。
二○○五年版・中小企業白書は、大企業との人材採用の違いを分析している。
高度経済成長期は、大企業と違って若年労働力の確保がむずかしかったため、中高年を含めた中途採用に力点を置いた。
その後は主婦パートも戦力化の列に加え、最近はフリーターも視野に入れている。
大企業との対抗上、フレキシブルな人材獲得をおこなってきた中小企業だからこそ、フリーター再生の知恵も秘めている。
たとえば『二○○五年版・中小企業白書』(中小企業庁)によると、専門的なスキルを従業員に習得させる方法として、小規模企業ほど本人の「自発的な学習」にウエイトを置く。
企業規模が大きくなると、「上司・先輩の指導」や「研修」を通じてそれを習得させる傾向がある。
つまり規模が小さな企業には、自力で一人前の職業人になっていくための、教育のノウハウがある。
フリーターに必要なのは、この、自分の力で生きるというたくましさだ。
そんな中小企業の知恵を、今こそ借りるべきなのではないか。
知恵を総動員しなければ、若年雇用の難問は乗りきれない。
「一生、このままの状態が続くのだろうか」そんな不安が、最近頭をかすめるという.労働政策研究・研修機構がおこなった『第二新卒者の採用実態調査』(二○○五年)は、学校卒業後いまの仕事に就くまでに六カ月以上五年以下の間隔が開いている人を第二新卒者と命名し、企業の採用条件などを調べている。
企業が採用にあたってもっとも重視するのは「年齢」で、その上限は「二五歳」、そして「三○歳」と、二つの山があった。
卒業年次でいうと、新卒者枠で採用するのは「卒業後一年以内」、中途採用者枠は「二年以内」「三年以内」という答えが多かった。
この調査の対象者は、正社員として働いている若者たちである。
彼らも条件のいい転職を一九九○年代の、就職が厳しい時期に大学を卒業したH夫は、一度も正社員になったことがない。
就職して十余年。
転職は五回した。
最初は印刷関係の会社の営業、次は機械メーカーと転々とし、職業人としての呼称もアルバイト、契約社員、派遣社員と変わっていった。
二○○○年に、父親も会社をリストラされた。
狭い家に年を食った親子が顔をつき合わせる関係は、精神的にもよくはない。
「どうすればいいのかな、お前のこれから」。
そんな父親の繰り言めいた言葉を耳にするにつけ、家を出たいと思うのだが、それだけの経済力も中途採用者と同じ枠をするなら、なるべく学校卒業後、あまり時間が経過しないうちに、ということだろう。
フリーターなら、なおさら早いうちに身の振り方を考えたほうがいいわけだ。
逆にいうと、二○代のうちに一生の方向づけをさせるというこうした年齢制限が、就職活動をおこなううえで、大きな壁として立ちふさがる。
長寿高齢社会なのに、車で言えば新古車(たとえばカーショップに一時期展示しておいたような、ほとんど走っていない車のこと)以外はノーというのは、ちょっと酷ではなかろうか。
いずれにしても、フリーターの定義は三卒二四歳まで、では三五歳になったら正社員の仲間入りができるのかと一言えば、そんなことはないのである。
いったんフリーターになると、ずっと漂流する可能性がある。
団塊世代がいなくなったり、景気が上向政態働実きになりだせば、企業も新卒者の採用意欲労用が高まるに違いない。
だが、現時点でフリーターになっている人たちは置き去りにされたままだ。
いまフリーターをしている若者たちは、中年になってもフリーターをしているかもしれない。
すでに、そんな傾向が出始めている。
中高年フリーターが、漂流し始めている。
それは、大きな社会不安さえ招きかねない。
流きれて、いつか中高年中高年男性フリーター一○○万人時代フリーターの若者たちも、いつまでも浮き草のような生活を続けたいとは、思っていないだろう。
正社員になって、結婚して、生活を安定させたいと願っているのではなかろうか。
『若年層の意識実態調査』(内閣府、二○○三年)によると、二○〜三四歳男性の八六・三%、女性の四九・九%は「〔人は〕定職に就くべきだ」と考えている。
いつまでに定職に就けばいいと考えているのか。
もっとも多かったのは、男女とも「三〜二五歳までに」だった。
だが現実には、中高年になってもパートタイマーやアルバイト、派遣社員など非正社員として働く人たちが、じわじわ増えている。
この数字は「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員・嘱託」「その他」に分類される人たちの数である。
それぞれの年によって、多少の調査のバラツキはある。
この五分類は二○○二年時点のもので、たとえば「労働者派遣事業所の派遣社員」は、九七年は「派遣企業の派遣社員」、九二年は単に「派遣社員」だった。
「契約社員・嘱託」も、九七年、九二年は「嘱託など」だった。
このように多少の違いはあるものの、大まかな非正規の社員、職員数は把握できよう。
「非」という冠がつく仕事をしているのは、圧倒的に女性が多い。
その意味で非正規労働は女性問題でもある。
フリーターという定義は、男性は未婚、既婚を問わないが、女性は未婚者に限定している。
六五○万人(二○○二年)という中高年の女性非正社員には未婚者も混じっていると思うが、年齢からいって既婚者が大半だろう。
そのような判断から、中高年になってもフリーターを続けざるをえない男性、あるいはリストラの対象になり、パート、派遣などで働かざるをえない男性に焦点をあてる。
『就業構造基本調査』で見ると、非正規労働に従事する男性は九二年に比べて九七年はいったん減少するが、二○○二年調査では一気に増加して、中高年フリーター一○○万人時代に突入する。
年代別に見ても特色がある。
二○○二年調査から浮き彫りにすると、「三五〜三九歳」の男性が他の年代に比べて多く就いているのが「アルバイト」(七万一○○人)や「派遣社員」(一万七七○○人)だ。
「アルバイト」は「四五〜四九歳」男性は五万二○○人と減るが、「五○〜五四歳」になると盛り返し、その数は六万八三○○人になる。
「派遣社員」に関しては、その数は年齢に反比例し、「五○〜五四歳」八八○○人、「五五〜五九歳」八三○○人というように、どんどん減っていく。
逆に高年齢男性に多いのが「パート」と「契約社員・嘱託」である。
前者は「三五〜三九歳」は二万一五○○人だが、「五○〜五四歳」四万三○○○人、「五五〜五九歳」は五万二三○○人に達する。
後者に関しても「三五〜三九歳」は六万四二○○人に対し、「五五〜五九歳」は三万六六○○人だ。
こうした数字のうち、どれくらいが若年フリーターから流されてきたかまではわからない。
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